saikaanin’s diary

転職ばかりしていたわたしの過去

14.その男ショーター・ウォン①

マリアはぼんやりと部屋を眺め
ソファーに座っている

あれから何日経ったろう
葬儀と警察の事情聴取
ゲイリーの母と二人でいったい
どうやってそれらを進めたのか
ほとんど記憶にない

悲痛な塊をかかえたまま・・・

顔が涙とアルコールでべたついている
ここしばらくまともに食事をとっていない
それはゲイリーの母も一緒だ
何か買ってこないと・・・

外へ出る
足元がふらついて、ずいぶん筋力がおちたようだ
ボクシングも、トレーニングも
全くする気になれない
たった一人では・・・!

スーパーマーケットへの途中
向かいから歩いてきた二人組の男にひどくぶつかられた
「Excuse me」
明らかに相手からの悪意が感じられたのだが
メンドウなことになりたくない
「へぇーお姉ちゃん、それで謝ってるつもりか?
お詫びにちょっと付き合えよ」
とっさにマリアは男の腹をめがけて拳をくりだし
もう一人の男がひるんだ隙に逃げ出した

せまい路地に入り生ごみの臭いがひどいガーベッジカン
の陰に身をひそませる
悪臭のせいで一気に胸がむかつきおまけに頭の血の気が
すうっと引いてゆく

次の瞬間右腕をぎゅっとつかまれた
心臓が縮みあがりその方向にふりかえる
「あんたの右ストレートすげえな、でも
大丈夫か顔色が・・・」

(ナニ?紫のモヒカン、アイブロウピアス
ーチンピラ、ああ・・・ついてない)