13.紫の雨⑤
結局ショーターはそのジムであの黒髪の女
に二度と会うことはなかった
多分入れ違いで退会してしまったか
あのときは見学と体験のみだったのかもしれない
five months later 5ヶ月後
「ねえゲイリーコインランドリーに行くんだけど
他に洗濯ものある?」
「マリア、置いとけよ俺が持っていく、
お前今日は仕事で遅かったし
ゆっくりしてろよ」
「じゃゆっくりヤンキース戦でもみるかぁ!
でも、早く帰ってきてね」
ゲイリーは鼻歌を歌いながら
表へでる
いつものランドリーは全て使用中
待つのはいやだ、でも仕方ない
2ブロック向こうへ行くか
しかし・・・
あの辺り最近良くない噂がながれている
まるで1985年に戻ったかのような不穏な空気が
そこに漂っているとか
白人のストリートギャングとイタリア系マフィアの抗争
があり、それにチャイニーズマフィアが絡んでる?
(この2021年にそんな亡霊みたいなもんあるわけないぜ!
ニューヨークは大昔の荒んだ町じゃねぇ)
ゲイリーはランドリーへ向かう
数台のマシンがごとごと音をたて回っている
天井の電灯はちかちか明滅し悪い予言のようだ
そこへ金髪の髪を立てた、まるでへびかトカゲみたいな冷血動物
を思わせる男が入口で立ちどまった
と、さらに二人の男が彼の両サイドに・・・
フードをかぶり明らかに顔を見られないようにしている
”パァーン”
銃声?
はじかれたように3人の男は走り出した
ゲイリーもつられて表へ走り出た
(ったく!噂は本当なのか?)
3人の男はばらばらになり姿が見えなくなった
ゲイリーの向かう方にまた別の男があらわれた
彼はゲイリーに気づき
「伏せろ!危ない!」
”パパァーン”
「くそっ」
素早い動きで銃を構えその男は
ゲイリーを撃った人物に発砲した
「おい!あんた!!しっかりしろ!」
ゲイリーは、短く辛そうに呼吸をし
「あんた・・はっはっ・・く、あ!」
「しっかりしろ死ぬんじゃない!」
「アーッシュ!」
「リュウ!ショーターは!!」
「もうすぐ来る、アッち、くっそ!」
「リュウ、お前も撃たれたのか?」
「俺は大丈夫だ、アッシュ。それよりそいつは
気の毒に巻き込まれちまったのか?」
必死で蘇生処置をアッシュと呼ばれる男はゲイリー
するのだが、ゲイリーの呼吸が弱まってくる
「死ぬな!死ぬな!あんたっ」
リュウも血まみれの手でゲイリーの手を強く
握りしめ励ます
「マリア・・・マリア・・・」
やがてゲイリーは静かに目を閉じ動かなくなった