saikaanin’s diary

転職ばかりしていたわたしの過去

22.あなたは私にあなたが何者であるか証明する必要はない⑤

ショーターには好きな人がいる いたってなにも不思議じゃない
とっても綺麗な人で、私はうちのめされた


ーそれでわかった 
私は、いつの間にか、本当に知らないうちに
ショーターのことを、とても とても好きになっていたことを


不思議だな・・・友達ができて、その子と仲良くなって
その友達に別の仲良しがいても【ちょっと傷つくけど】
うちのめされることはないのに

恋する心は特別だ


「イージュン準備できたか?」
「うん、ちゃんとお弁当も作ったよ」
「卵焼きぃ~?」
ショーターはニタァと笑うとお弁当の入ったバスケットを
大事そうに車に運んだ


「それで・・・ニューヨークの東部だよな、その
ナントカばあさんが絵に描いてた場所っていうのは」
「もお、ショーターそれでもアメリカ人?
グラン・マザー・モーゼス知らないってあきれる」
「しらねーよ、そんなの 
けどお前ほんっとに英語うまくなったよな
ちゃんとベンキョーしてたんだ」
「それがここに来た一番の目的だからねー」


今日はショーターがイージュンとの約束で
彼女の行きたいところへ連れて行ってくれる日だ
(もうすぐアメリカを離れなくてはならない
ショーターともお別れだ・・・だから今日は楽しもう)


イージュンの想像するニューヨークはニューヨークシティのみだった
が、ここへ来る前にアメリカについて調べていると
ニューヨーク州の範囲は大きく、緑と田園風景が広がる
避暑地としても知られる場所もあることが分かった
そうしてモーゼスおばあさんの出身地と彼女が絵の題材にした
場所がバーモント州ベニントンというところだということも


ニューヨークから車で4時間ほど
ちょっと強行軍だが1日で帰ってこられる
ショーターは快く引き受けてくれた

マリアが張大飯店に訪れた日からショーターは
あまり店に姿を現さなくなった
イージュンはそのことには触れずにいる



目的地までの道のりは長い
イージュンも交代で運転する
(あーこのままずーっとショーターと一緒にいたいなあ)
と思っていると視線を感じショーターの方を振り向いた
彼は真剣な表情でこっちを見ている

(やだ、私の心の声聞こえた?)

「イージュン・・・」
「なに?!」
「ーー・・・ハラへったぁ~!!」

目的地までまだまだなのに・・・!
仕方なく小休憩をとることに
ショーターはおやつの入った袋と飲み物を
いそいそかかえ天気のよい表へ出る
と、助手席に置いたままのショーターのスマートフォン
ブーブー鳴っている
イージュンは手に取り、ショーターに渡そうとしたとき
相手と繋がってしまった
「ショーター!お前の話してたあの女がオーサーの仲間に
連れてかれちまったぞ!!お前今どこにいる?」