saikaanin’s diary

転職ばかりしていたわたしの過去

25.堕天使③

イージュンを乗せた車がホテルの前で止まる

「ボーンズありがとう。天使様にもよろしく言っといてね」
「天使ぃ?ああボスのことか。お前は知らねーだろうけど
ボスが天使だなんて、とんでもねーぜ!」

アッシュはマリアが張大飯店に現れて以降
ショーターが店に来なくなった時に
何度か様子を見に来たのだ

イージュンは初めてアッシュと会ったとき
金色の光を放つ天使に見えたのだ
そしてその時にはっと閃いた
「ねぇ、天使さま」
「俺は天使じゃねーよ。ったく、ショーターといい
イージュンといい・・・」
「私初めてショーターと会ったとき、ものすごく
彼が誰かに似てると思ったの!」
「?」
イージュンはちょっとまってて、とアッシュに言い
パタパタと自分の部屋へ行き戻ってくると
「ほら!」
ショーターをスケッチした紙を見せる
ピエタよ!」
「ーキリストを抱えるマリア像・・・?あのミケランジェロの?」
「そう」
「プッ、ショーターがキリストぉ・・・ははっ!
イージュンそりゃないぜ!!」

ひとしきりアッシュは笑ったが急に真顔になり
「イージュン、それはショーターに言っちゃ駄目だぜ」
「え?なんで・・・?」
「ああ、そのう…アイツにピエタとか、ヴァチカンの至宝
の話しても通じねえからさ」
「あは、そうだよね。さすが天使様、ショーターのことお見通し」

アッシュは、イージュンの描いた絵になんとも言えない
不安を感じたのだ
(十字架から降ろされた我が息子を哀しみの表情で
見つめるマリア…。キリストの母だというのに
とても若く美しい・・・)




ボーンズは別れ際イージュンの頬にキスしてくれた
そして
「また卵焼き作りにきてくれよな!」
イージュンは涙がこぼれそうになるのをぐっと我慢して
笑顔でさよならをした

ホテルのエントランスは立派で入ってゆくのに
ちょっとためらうほどだ
マーディアがイージュンをシルクのワンピースに
着替えさせた理由がわかった
そしてチップの用意も

慣れないチップ制度だが仕方ない
色んなことがあった一日で疲れ果てていたが
ドアマン、ベルマンに笑顔で話しチップを渡し
やっと部屋で一人になることができた

シーンという音ではない音に支配される…

ベッドに横たわると、そのままイージュンは眠ってしまった

『ママ、お昼になに食べる?』
『そうねえ・・・マーディアに電話してるんだけど
ランチもってきてくれるかしら?』
『ショーターがいないとムリだよ』
プループルルー、プループルルー
『ママ電話貸して、もしもーし、もしもし!HELLO!』

イージュンは体をビクッとさせ、目をさました
(夢か・・・)
ぼんやり辺りを見回す
(ーあれ…ここどこだ…?あー!おなかペコぺコ)
プループルループループルルー