7.マリアとゲイリー①
マリアは3件目のボクシングジムを後にすると
スマホの画面で次の場所を確かめた
「ファイト・クラブ」
(なんかそのまんまのネーミングだねえ…)
フロントで説明を受け見学をさせてもらう
リングの中でスパーリングをしている
浅黒い肌の男に視線が吸い寄せられる
(プロかしら?スピードが相手と全然違う
…迷っていても仕方がないから、ここにしょう)
朝7:00マリアは出勤前にジムに向かう
早朝からトレーニングを熱心に行う人々が多いなか
(いた、あの時の男だ)
ウェイトトレーニング、スパーリング、ミットの打ち込み
グループレッスンを受けられるときは参加する
そして休憩中にあの男を盗み見する
マリアは通い始めて7日目に彼に声をかけた
「Hi、あんたプロの選手?もし可能なら私をコーチしてほしいんだけど
どうかしら?」
マリアは努めて真摯な態度で彼に話しかけた
鋭い横顔でマリアの言葉を聞いていたが、正面を向いた
その瞳は子どものようにあどけない
「あんたみたいな美人なら、喜んでコーチするよ。ただし
条件がある」
「条件?」
マリアは一瞬ひるんだ
「俺に読み書き教えてくれねえか?」
マリアのその時の表情がゲイリーにはわすれられなかった